小谷野 敦

『遊君姫君(ゆうくんひめぎみ) 待賢門院と白河院』

四六判 上製 256頁 本体1900円 ISBN978-4-87198-653-3

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大河ドラマ「平清盛」の時代が舞台。

藤原氏による摂関政治から王家・白河院による院政へ、そして武家へと権力が奪取されるまでの歴史を、王家の側から描写。

王家の権力闘争と、禁じられた性愛の官能美を、冷徹な筆致で描く王朝絵巻。

待賢門院璋子とは…、祇園女御とは…、

史料を基に、詳細に考証を重ねた、著者渾身の歴史小説。

――その一部を抜粋
【 法皇はすこぶる熊野信仰の念が厚く、この年、四度目の熊野詣を考えていた。この年は九月に閏があったのでその月に出発することにして、前の九月に璋子に会おうと考え、九月二十日の夜、璋子は密かに退出して正親町第に入り、二十五日まで法皇と居を共にした。そして閏九月七日、熊野詣に出発した。その月、璋子は月のものを見なかった。さては、と思った。先月の法皇との逢瀬で懐妊したのではないか。その想像で、璋子は喜びに打ち震えた。璋子は十八歳だった。天輪の許に男児が生まれたばかりであるから、院は六十五歳で、二人のわが子の誕生に廻り逢ったことになるが、よもやその二人が、三十六年後に、院が予想した、都を舞台とする戦乱において、敵味方に分かれるとまでは、どうして知ろうか。
  十月五日、法皇が熊野詣から無事帰還して正親町第に入ると、逸早く、中宮が懐妊したらしい、ということが密々に伝えられた。
(わしの子だ)
法皇も歓喜した。むろん、生まれた子は表面上は帝の子ということになる。…】

256頁の長編ですが、読み込むほどに語彙の豊富なことに魅了されます。文学者・小谷野敦ならではの歴史小説。

小谷野 敦(こやの とん)
1962年茨城県生まれ、埼玉県育ち。東京大学文学部英文学科卒。同大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了、学術博士。元大阪大学言語文化部助教授。比較文学者、作家。2002年に『聖母のいない国』でサントリー学芸賞受賞。
評論や評伝に『もてない男』『恋愛の昭和史』『谷崎潤一郎伝』『里見ク伝』『久米正雄伝』『現代文学論争』『猿之助三代』など。小説に『悲望』『童貞放浪記』(映画化)『美人作家は二度死ぬ』『中島敦殺人事件』『母子寮前』(芥川賞候補)『東海道五十一駅』がある。

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